この記事ではヘアブリーチが毛髪にどのように作用するか、
そしてなぜ毛髪が痛むのかについて説明していきたいと思います。
まず毛髪の基本的な構造については知りたい方はこちらの記事をご覧ください↓
毛髪の特徴
1. ヘアブリーチの主成分
ヘアブリーチは1剤と2剤に分かれています。
1剤:アルカリ剤 主にアンモニア水が使われています。
アンモニアは揮発性があるので長時間のpHの維持は難しいですが、
反応速度の速さなどから優れたアルカリ剤と言えます。
2剤:過酸化水素水 日本では染毛剤製造販売承認基準により
6%以下と決められていますが、海外だと最大12%なんてものもあります。
アルカリ剤の強さと過酸化水素水の濃度が高いほど脱色力は強くなります。
またホワイトブリーチには脱色促進剤が2剤に追加されます。
(促進剤は通常過硫酸アンモニウムと過硫酸カリウムの混合物です①1)。)
2. ヘアブリーチのメカニズム
まず、ヘアブリーチの1剤と2剤は使用直前に混合します。
毛髪に塗布していくとアルカリ剤の働きで毛髪が膨潤してキューティクルが開きます。
同時に1剤と2剤の成分が、コルテックスに浸透します。
過酸化水素はアルカリ溶液中では不安定なので分解されて
水と活性酸素が発生します。
(活性酸素とは大気中に含まれる酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したものの総称)
活性酸素がメラニン色素を脱色して、髪が明るくなります。
1剤と2剤の反応が終わってしまうとそれ以上脱色されないので、
長時間おけばより脱色されるわけではありません。
脱色は非常に広汎なポリマー構造の分裂を伴う一方、
色素顆粒を維持している多くの架橋の分離を伴うはずであると議論されてきましたが、
これらの過程に関与する化学反応は知られていません①2)。
3. ヘアブリーチは何故痛む?
ヘアブリーチはメラニンを脱色することが目的ですが、
その副反応が毛髪ケラチンにも起こっています。
ダメージは、主にシスチン(硫黄同士の結合)がシステイン酸へ酸化された結果生じる、
ジスルフィド架橋の減少による毛髪構造の弱体化と全体的な親水性の増加によるもの
と考えられます①3)。
ポリペプチド鎖同士の結合が少なくなってしまうと
簡単に枝毛や切れ毛が起きてしまいます。
また、ブリーチによるダメージで毛髪はより多孔質になるため、
多くの水分が吸着することになります。
これにより湿度に影響されやすい髪になってしまいます。
さらに多孔質になることで光の乱反射がおこり、毛髪の見た目にも影響します。
そして、毛髪表面にあるMEAですが、一回のブリーチ処理で
80%も失われてしまいます。
MEAは一度失われると、再生せず、
トリートメントなどに単純に配合するだけでは
毛髪に定着することはできません。
これらのことから、ヘアブリーチはいろいろな角度から髪を痛めつけ、
一度痛んでしまった毛髪はもう元には戻らないということがよく分かります。
ここまで知ってしまうとブリーチをするのも施術するのも、
とても勇気が必要になってきます。
昔、美容師さんに、何度もブリーチを止められた経験があります。
きっと、私の髪のダメージを考えてくれていたんですね。
また、ブリーチ剤には酸化染料が配合されていないため、
かぶれを起こすことはほとんどありませんが、
刺激による炎症を起こす可能性があります。
4. 最近よく聞くケアブリーチって何?
ケアブリーチに使われている、ブリーチ剤は従来のものと変わりません。
そこに毛髪補修成分が加えられたものをケアブリーチといいます。
実際に髪が痛まなくなるのではなく、髪が痛んでないように見えるだけなんですね。
私は、名前から勝手に痛まないブリーチなのかなと思っていました。
ただこれに関しては情報が少なすぎたので、追って調べていきたいと思います。
以上がヘアブリーチについて今回私が勉強したことになります。
髪は痛むともう戻らないということだけは肝に銘じておきます。
参考文献
①デール・H・ジョンソン(山口真主訳)『ヘアケアサイエンス入門』(フレグランスジャーナル社 2011年)
1)p233
2)p234
3)p234