今回はヘアカラーについてまとめてみようと思ったのですが、
単純にヘアカラーといっても、
いろいろ種類があるので、思ったより情報量が多くなってしまいました。
今回は永久染毛剤の酸化染毛剤についてお話します。
1. 永久染毛剤(パーマネントヘアカラー)とは?
永久染毛剤は染毛成分がキューティクル及びコルテックスの奥深くまで浸透し、
化学的に固着するため、比較的長期間、色が持続してくれます。
永久染毛剤には酸化染毛剤と非酸化染毛剤があります。
非酸化染毛剤は現在あまり使われていません。
2. 酸化染毛剤とは?
現在、一番広く使用されているヘアカラーです。
1剤の酸化染料(+アルカリ剤)に2剤の過酸化水素(酸化剤として)を
使用直前に混ぜて使用します。
これは、ブリーチ剤(脱色剤)の基本構成に酸化染料が加わったものです。
色は2~3か月ほど持ちます。
3. 酸化染料とは?
酸化染料には3つに分類され、目的の色調に応じて組み合わせて使用されます。
〇染料中間体・・・本来無色だが、酸化すると発色する染料。
例:オルトまたはパラ置換のアミノフェノール類、フェニレンジアミン類
〇調整剤(カップラー)・・・単独では酸化されてもほとんど発色しない。
染料中間体とともに酸化されると染料中間体単独とは異なった色調に発色。
例:フェノール類、メタ-アミノフェノール類、メタ-ジアミノベンゼン類
〇直接染料・・・もともと色を有する染料。
例:ニトロパラフェニレンジアミン
*ちなみに、酸化染料にはまれにかぶれなどの
アレルギー反応を起こすものが含まれています。
その代表的なものに染料中間体のパラフェニレンジアミンがあり、
必ずパッチテストが必要になってきます。
図1 パラフェニレンジアミンの構造図
このパッチテストは、
髪を染める48時間前と30分前に必ず行うこと、と
日本理容美容教育センターの教科書には書いてありますが、
私自身、実際に行っている店舗は見たことがありません。。。
アレルギーは最初は軽度でも、徐々に重篤になる場合があります。
みなさん、ご注意くださいませ。
4. 酸化染毛剤、髪の中では何が起こってる??
反応機構が知りたい!
先ほど述べました通り、酸化染毛剤には、ブリーチ剤と同じ成分が入っています。
ですので、1剤と2剤を混ぜると化学反応が始まり、毛髪に塗布すると、
脱色と染色が同時に行われます。
ブリーチについて詳しく知りたい方は、こちら↓
ヘアブリーチ(脱色剤)のメカニズムと毛髪が痛む理由
染色に関しては、一般的に下記の図1ようなカップリング反応が
毛髪の中で起こっています。
染料中間体が反応性のあるイミン[10]に酸化され、
(p-ベンゾキノンのモノまたはジイミン、Z=OまたはNH)
次いでイミン[10]は、調整剤の電子求引性部位を攻撃し、
ジフェニルアミン誘導体[11]となります。
その後、ジフェニルアミン[11]は、インド染料[12]へ酸化されるが、
これは酸化染料系の基本的な発色団です。
青色のインド染料は、p-ジアミン類と、m-ジアミン類(X=NH3、Y=NH)
またはフェノール類のカップリングから、
赤色はp-ジアミン類またはp-アミノフェノール類とm-アミノフェノール類
(X=NH2、Y=NH)
のカップリングにより、
黄色や茶色はp-ジアミン類とp-アミノフェノール類やレゾルジノール類
(X=OH、Y=O)
のカップリングから作られています①1)。
図1 酸化染料の反応機構 ①2)
カップリング反応の結果、分子が大きくなり、
コルテックスの中に留まることができます。
ちなみにカップリング反応とは比較的大きな構造をもった2つの化学物質を
選択的に結合させる反応のことです。
5. 酸化染毛剤でなぜ毛髪は痛むのか?
やはり、毛髪に酸化ダメージを与えたためだと考えられます。
また、ダメージがひどく、毛髪の多孔質化が進んでいると、
色持ちも悪くなってしまいます。
またアルカリ剤の影響でMEAもほとんど失われてしまい、
艶のない見た目になってしまします。
しかしながら、ほとんどの製品(酸化染毛剤)において、
ダメージの影響を修復するための
コンディショニング成分が含まれています。
だから、染めた直後は毛髪がツヤツヤできれいにみえるんですね。
しかしながら、そういった成分も日々のシャンプーなどで
髪から流れ出てしまいます。
6. 酸化染毛剤についてまとめ
・他のヘアカラーに比べて、色は持続する。
・染色と同時にブリーチと同じ化学反応も起こっている。
・一般的に図1のような反応機構が起こっていて、化合物を選択的に作ることで
色味が調節されている。
・髪を染めた後、髪がきれいに見えるのは、髪が蘇ったわけではない。
以上が今回、私が勉強したまとめになります。
毛髪のおしゃれは危険やダメージと隣り合わせだから、
信頼できる美容師さんに任せたいですね!
参考文献
①デール・H・ジョンソン(山口真主訳)『ヘアケアサイエンス入門』(フレグランスジャーナル社 2011年)
1)p238-239
2)p239